国内のうつ病患者数は100万人を超え、抗うつ薬の売上げ高も1,200億円を超しました。
薬は病気を治すために作られるのですが、
うつ病患者の急増の背景には新薬発売があったと言われます。
本来は病気を治すための抗うつ薬が新たなうつ病患者を作り出したというのです。
これは、病気喧伝(びょうきけんでん)といわれ製薬企業の市場拡大戦略なのです。
は病気があるからクスリが作られる」患者はみな、この常識を信じ込んでいる。
うつ病の診断はDMS-Ⅴという世界的標準マニュアルで機械的に診断される場合が多いと言われます。
あなたは本当にうつ病ですか?
あなたは本当に抗うつ薬の服用が必要ですか?
あなたはうつ病のことを本当によく知っていますか?
新薬発売で急増したのは本当のうつ病患者か?
厚労省の調べでは、平成23年度の国内のうつ病患者数は100万人を突破したそうです。
さらに、
公務員の統計では、国家公務員、地方公務員ともその約1%がうつ病などの精神疾患で休職中だそうです。
民間企業におけるうつ病の罹患率は公表されていませんが、公務員並みの患者数があると見込まれ、特に残業が多く、精神的なストレスも多いIT関連企業でのうつ病の罹患率は3%程度だと言われています。
うつ病の患者数は昔からそんなに多かったのでしょうか?
ここに非常に興味深い資料があります。
これは、2014年に週刊現代が、「病気はクスリで作られる」という特集で公表したグラフです。
2000年にグラクソ・スミスクライン社が国内でパキシルという抗うつ薬を新発売しました。
これは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)といわれる作用の薬で、現在も使われている薬ですが、国内でも2000年に「うつの特効薬」という触れ込みで新発売されたのです。
その前後の、
- 抗うつ薬の売上げ高
- うつ病の患者数
を表したのが下の図なのです。
1999年までのうつ病患者数は約43万人で横ばいですが、
グラクソ・スミスクライン社のパキシルの発売と同時に、うつ病患者数は急増し、2002年には70万人、2005年には92万人と、倍増しているのです。
パキシルなど抗うつ剤の売り上げ高も約10年で1,200億円を超え5倍以上に拡大しているのです。
このような抗うつ薬の新薬発売に伴ううつ病患者数の増加は日本だけでなく、アメリカ、イギリス、北欧、そして南アメリカや中国でもみられ、中国では2012年の1年間だけで抗うつ薬の売り上げ高が22・6%も伸張したと言われています。
患者は薬で作られる
国内におけるパキシルの売りの伸長は、
うつ病は心の風邪
というキャッチコピーに後押しされて伸びたのです。
今でこそ、「心療内科」や「メンタルクリニック」などの診療所をよく見かけるようになりましたが、当時は精神疾患であるうつ病などはネガティブのイメージが強く、精神疾患は隠す風潮があったのです。
しかし、「うつ病は心の風邪」のキャッチコピーにより、
- うつ病は誰でも罹る
- うつ病は風邪のような一般的な病気
- うつ病は薬を飲めば直ぐに治る
という誤ったイメージが定着し、誰でもが気軽に精神科を受診するようになったのです。
このようにしてうつ病の患者数が急増し、グラクソ・スミスクライン社のパキシルの売上げが伸びたのです。
このような現象は、病気喧伝(びょうきけんでん)といわれます。
病気喧伝(Disease mongering)は、製薬会社や精神科医、また他の専門家あるいは消費者団体などが、市場を拡大するために、販売したり治療法を伝える目的で、病気の診断に用いる境界を拡大したり、そのような啓発を市民に宣伝することに対する、蔑称である。例として、男性型脱毛症(AGA)や社交不安障害(SAD)が挙げられる。典型的には「医師に相談を」で締めくくられる広告である。 Wikipediaより
国内では医薬品そのものの宣伝は禁止されていますから、
- 気持ちが落ち込んだ ⇒ 心の風邪 ⇒ 薬を飲めば治ります
- ハゲてきた ⇒ AGAです ⇒ AGAは薬で治ります
こうして病気のキャッチコピーをまず広め、
- 病気だと認識させる
- 病院を受診させる
という手順で患者数を増やし売上げ高を上げるのが病気喧伝なのです。
このようにして、
- 国内のうつ病患者数は急増し、
- 1,200億円を超す抗うつ薬の市場が作られた
のです。
さらに問題なのは、
パキシルに代表されるのSSRIといわれる抗うつ薬がどうしてうつ病に効くのかは明確に解明されていないのです。
プラセボ(偽薬)との比較で効果にほぼ差がなかったという報告もありますし、
SSRIによるうつ病の改善率は約60%で、寛解率はわずか30%だとする臨床成績もあるのです。
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うつ病の診断マニュアルもうつ病を増やした
うつ病の患者数が急増した原因は病気喧伝の影響だけではありません。
“ゆううつ”も診断しだいで“うつ病”になる でお伝えしたように、
うつ病の患者数が急増した背景には「うつ病の診断方法」も大きく関わっていると言われています。
現在、世界的のうつ病の診断で使われている診断マニュアルは、
米国精神医学会のDMS(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders;精神疾患の診断・統計マニュアル)がデファクトスタンダード(事実上の標準)として用いられています。
DMSは1980年代以降に世界的に普及しましが、1980年に改訂されたDMS-Ⅱでは、うつ病の原因を遺伝や性格として分類していたため、診断に際しては原因の特定に時間を要して効率的な診断が下せませんでした。
DMS-Ⅲでは、うつ病の診断は症状による診断へと大きく変わり、原因の究明はおこなわず、病状そのものを病名に診断するように単純化されたのです。
そして、現在広く用いられている、2013年5月に改訂されたDMS-Ⅴでは、
症状に関する質問項目を一つずつ当てはめ、誰でもが機械的に診察できるように簡略化されたのです。
具体的には、
「当てはまるか?」と下記の9項目を問い、
- 抑うつ気分
- 興味または喜びの著しい低下
- 食欲の増加または減少、体重の増加または減少(1か月で体重の5%以上の変化)
- 不眠または過眠
- 強い焦燥感または運動の静止
- 疲労感または気力が低下する
- 無価値感、または過剰・不適切な罪責感
- 思考力や集中力が低下する
- 死について繰り返し考える、自殺を計画するなど
そして、
- 最近2週間の間に、
- 5つ以上の項目が、ほとんど毎日感じられ、
- 社会的あるいは職業的に障害を引き起こしている
という場合には、うつ病と診断されるのです。
くわしく見る ⇒ うつ病の自己診断
私の場合、
- 何となく落ち込んだ気分がする
- やる気が出ない
- 良く眠れない
- 物事に集中できない
と、5項目が当てはまります。
ですから、
心療内科で上の5項目について「ハイそうです、、」と答えればうつ病と診断されてもおかしくないのです。
くわしく見る ⇒ あなたはうつ病ではないかもしれません
DSM-Ⅳの作成責任者であるアレン・フランセス氏は、
DSM-Ⅴによる診断では本来は投薬の必要がない患者までが薬漬けになる危険性が生じている
と述べているのです。
アレン・フランセスによれば、
製薬業界のビジネスモデルは、軽い症状の人々にも病気だと思い込ませることで市場を拡大してきており、特に計数化することができない精神疾患では病気の境界が不明瞭であるため、効果が不明瞭な治療薬の販売を拡大してきた。
というのです。
最近では、
も開発中ですが、
実用化にはまだ時間がかかり、現状では問診による診断に頼らざるをえないのです。
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問診による診断は経験と熟練が必要
うつ病とは、自分と周囲の環境との間にズレが生じ、肉体的、精神的なストレスが原因となるる病気ですから、
うつ病の診断には、熟達した精神科の医師が注意深く時間を掛けて患者に向き合う必要があるのです。
しかし、そうした習熟した技術は徐々に失われつつあり、
DSM-Ⅴにより機械的に診断を下している精神科医も多く、
内科医が不定愁訴を訴える患者に抗うつ薬を処方することも珍しくないといわれます。
うつ病の患者は、
- できるだけ薬は飲みたくない
- 依存性があるから薬は飲みたくない
という方が多いと言いますが、
あなたは本当にうつ病ですか?
あなたは本当にうつ病のことを知っていますか?
専門家である精神科の言うことに従うことも大事ですが、