最近、うつ病は生活習慣病だとする多くの論文が発表されています。
生活習慣病とは、
- 食習慣
- 運動習慣
- 休養、喫煙、飲酒等の生活習慣
の乱れが原因となる疾患で、高血圧、肥満、糖尿病などが代表的です。
うつ病も、
- 栄養素の偏り
- 不規則な食事
などの食習慣の乱れが原因の一つだというのです。
特に、
ビタミンやミネラル不足では脳内刺激伝達物質が少なくなり、
うつ病や不安障害に陥りやすいといわれています。
うつ病ではどんなミネラル不足が原因になるのでしょうか?
ミネラル不足はうつ病の原因になる
ビタミンやミネラルはエネルギー源では有りませんが、体の代謝や体調を整える上で必要不可欠な栄養素です。
毎日仕事が忙しくて外食ばかりになっていると、ビタミンやミネラルが不足し、ストレスを感じやすくなると言われていますが、大丈夫でしょうか?。
国立国際医療研究センター・疫学予防研究部の研究グループは、
マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルを多く摂取している人は摂取が少ない人に比べて抑うつ症状が少ない
という研究成果を報告しています。
Dietary intake of minerals in relation to depressive symptoms in Japanese employees: the Furukawa Nutrition and Health Study.
Nutrition. 2015 May;31(5):686-90.
詳しく見る ⇒ 原著論文(英文)
欧米などの研究からミネラル摂取と抑うつ症状との関連が報告されていますが、欧米に比べてカルシウムなどのミネラル摂取が比較的に少ない日本人における研究はほとんどありませんでした。
国立国際医療研究センター・疫学予防研究部の研究グループは、ミネラル摂取と抑うつ症状との横断的な関連を日本人の大規模な調査において明らかにしました。
この研究では、
- 関東地方の企業従業員約2,800名(18~70歳)について
- 栄養摂取の調査
- 抑うつ症状の調査
を実施し、がん、循環器疾患、肝疾患、腎疾患、精神疾患に罹患する人を除外した2,006名についてを解析を行ったのです。
抑うつ症状については、世界的に汎用されているCES-D質問票を用いています。
栄養素の摂取については、過去1ヵ月間に食べたものを詳細に聴取し、習慣的な食品摂取量を算出し、各ミネラル摂取量、
- マグネシウム
- カルシウム
- 鉄
- 亜鉛
の摂取量を算出し、さらに各ミネラルの摂取量にお応じて3群に分けて、ぞれぞれのミネラル摂取量と抑うつ症状との関連を調べたのです。
その結果が下記の図ですが、
マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラルの摂取量が多いヒトは少ないヒトより抑うつ症状が少ない
ということが分かったのです。
すなわち、
ミネラルの摂取量が少ないとうつ病の症状が多い
という結果が得られたのです。
各ミネラルにおける、オッズ比は、
- マグネシウム : 0.63
- カルシウム : 0.64
- 鉄 : 0.59
- 亜鉛 : 0.63
です。
オッズ比というのは、ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度で、オッズが1ということは、事象の起きる確率と起きない確率が同じことを意味しますので、今回の結果は、各ミネラル間では差がないものの、ミネラルの摂取量が少ないヒトでは多いヒトに比べて抑うつ状態に陥りやすいということが明らかになったのです。
研究グループでは、
マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛などは脳内伝達物質であるセロトニンなどの合成において必要であることが知られている
今回の結果は生物学的なメカニズムにおいても妥当な結果だと
述べています。
しかしながら、今回の調査では、
ミネラルの摂取と抑うつ症状の発現の因果関係
については明らかになっておらず、今後の更なる研究や検証が必要だと思われます。
ミネラルの摂取不足はうつ病発症の原因の一つになっていることが明らかになりました。
しかし、
厚労省の国民栄養調査では、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛などの摂取量の不足は指摘されていないことから、
- ハンバーガーなどファストフォードの偏った食事
- インスタントラーメンなどインスタント食品への偏った食事
を避け、通常な食事を行っていればミネラルの不足になることはありませんから、
安心してください。
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