今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
うつ病は生活習慣病だとする研究報告も多く、
うつ病の原因には、
- 食習慣の乱れ
- 栄養素の偏り
が大きく関与していることが明らかになっています。
最近、食物繊維はうつ病に良いと言われています。
国立国際医療研究センターの研究グループは、
野菜や果物の食物繊維の摂取量が多いと抑うつ症状が少ない
と発表しました。
食物繊維には腸内の善玉菌を増やしてストレスやうつ症状を解消する働きがあるというのです。
あなたは食物繊維をたくさん摂っていますか?
食物繊維を多く摂取するとうつ病に良い
脳内の神経伝達物質の代謝には多くの栄養素が関与していることから、うつ病は食生活と密接な関係があると言われ、最近ではうつ病は生活習慣病だとさえ言われています。
国立国際医療研究センター・疫学予防研究部では、抑うつに関する栄養疫学研究を行っています。
栄養疫学とは、食べ物(栄養)と健康とのつながりを疫学的に調べる学問で、国立国際医療研究センター・疫学予防研究部ではうつ病と食生活の関連を研究しているのですが、
野菜・果物からの食物繊維を多く摂取している人は摂取が少ない人に比べて抑うつ症状が少ない
との研究報告をしています。
Dietary fiber intake and depressive symptoms in Japanese employees: The Furukawa Nutrition and Health Study.
Nutrition. 2016 May;32(5):584-9.
詳しく見る ⇒ 原著論文(英文)
研究では、
- 関東地方の企業に勤める1,977人(18~70歳)
- 食歴法質問票により食物繊維摂取量を算出
- CES-D質問票により抑うつ症状を評価
そして、対象者を、
- 総食物繊維
- 水溶性食物繊維
- 不溶性食物繊維
- 野菜・果物由来食物繊維
- 穀類由来食物繊維
の摂取量の多少によって3群に分けて各食物繊維の摂取量と抑うつ症状との関連を調べたのです。
その結果、
野菜・果物由来の食物繊維の摂取量が多い群では抑うつ症状が統計的に有意に少ない
ことが判明したのです。
この調査では、
食物繊維を、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、野菜・果物由来食物繊維、穀類由来食物繊維の4種類に分けていますが、
食物繊維には、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維があり、さらに、野菜や果物などに含まれる食物繊維に分けられます。
果物の食物繊維は水溶性、野菜の食物繊維は不溶性食物繊維に属します。
研究チームは、
野菜や果物由来の食物繊維の摂取量が多いと抑うつ症状が少ない理由として、
野菜や果物の食物繊維は穀類の食物繊維に比べて発酵しやすく、発酵により産生される単鎖脂肪酸が抑うつ症状を引き起こす炎症を抑制したと考えられる
と結論しています。
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食物繊維は善玉菌を増やしうつ病に良い
野菜や果物の食物繊維の摂取が多いとうつ症状が少ない理由として、
『発酵により産生される単鎖脂肪酸が抑うつ症状を引き起こす炎症を抑制した』
というのですが、
最近、腸内細菌が脳の機能に影響を与えているとする多くの研究論文が発表されています。
既にこのサイトでもご紹介したように、
ヤクルトは、健常者とうつ病患者の便を採って、
- ビフィズスの菌量
- 乳酸桿菌(ラクトバチルス)の菌量
を測定したところ、
うつ病患者では善玉菌であるビフィズス菌が低下していた
と報告しています。
詳しく見る ⇒ 善玉菌が少ないとうつ病になる
さらに、
サッポロビールと大阪大学の研究グループは、『乳酸菌はセロトニンを増やす』ということを明らかにしています。
乳酸菌は、
- 腸におけるセロトニンの放出を促進する
- 腸のセロトニンは自律神経に作用してストレスや不眠を解消する
ということが世界で初めて明らかになった報告しています。
食物繊維は腸内細菌の餌となって腸内の善玉菌を増やす働きがあるのです。
善玉菌が増えれば腸内のセロトニンが増え、ストレスの解消や不眠に作用するのです。
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