サカナを食べるとうつ病の予防になる
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で精神疾患の新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
サバやアジなどに代表される青サカナは不飽和脂肪酸が多く、
血液をサラサラにして糖尿病などの生活習慣病や脳梗塞、脳卒中などを予防することが分かっています。
しかし、サカナには生活習慣病だけでなく、
うつ病を予防する効果があることが科学的に立証されているのですがご存じですか?
うつ病の予防効果があるサカナは、不飽和脂肪酸を多く含む青サカナです。
サカナを食べるとうつ病の予防効果があるのです。
サカナを食べるとうつ病のリスクが低下
サカナを食べるとうつ病のリスクが17%低下し、うつ病の予防効果があることが報告されています。
Fish consumption and risk of depression: a meta-analysis
J Epidemiol Community Health 2015.9.10
詳しく見る ⇒ コチラ
この論文を発表したのは青島大学の研究グループですが、2001~2014年に発表された16件の研究論文を分析し、サカナの摂取とうつ病の発症について調べたのです
解析は合計計15万278人を対象として行われ、
サカナを最も多く食べた人は最も少ない人に比べて、うつ病の発症リスクが17%低下する
ことが判明した。
さらに性別では、
- 男性ではうつ病リスクが20%低下
- 女性ではうつ病リスクが16%低下
ことが判明したと結論しています。
サカナのうつ病予防は日本人でも立証
サカナを良く食べるほど、うつ病が予防されることは国内の研究でも報告されています。
日本医科大学の吉川栄省医師らの研究グループは、サカナに含まれる長鎖n-3系多価不飽和脂肪酸とうつ病予防の効果について発表しています。
る」とまとめている。
Fish consumption and resilience to depression in Japanese company workers: a cross-sectional study.
Lipids in health and disease. 2015;14;51.
詳しく読む ⇒ 原著論文
この研究では、大手企業に勤務する日本人社員527人を対象に、
- うつ症状をうつ病自己評価尺度で自己評価
- うつ症状に対するレジリエンスを自己評価
- サカナの摂取頻度は自己記入式食物摂取頻度調査票で調査
したのです。
レジリエンス(resilience)とは、回復力、逆境から立ち直る力、という意味で、逆境にめげない強靱な心を評価する指標です。
その結果、
- サカナの摂取頻度とうつ病自己診断表か点数には相関関係がある
- サカナの摂取頻度とレジリエンスには相関関係がある
ということが分かったのです。
すなわち、
など、サカナを頻繁に食べているヒトは
- うつ病の自己診断評価のポイントが低い
- ストレスなどからの回復力が強い
ことが判明したというのです。
吉川医師らは、今後、うつ病へのレジリエンスに対する不飽和脂肪酸の予防的効果を臨床試験でさらに検討する必要があると述べています。
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うつ病を予防するサカナの不飽和脂肪酸とは
私達の体の脂肪(脂質)は下記の4つに分けられます。
- 中性脂肪
- コレステロール
- 脂肪酸 → 飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸
- リン脂質
の4種類ですが、
脂肪酸は中性脂肪の原料となる脂質ですが、
- 飽和脂肪酸
- 不飽和脂肪酸
に分けられます。
飽和脂肪酸も不飽和脂肪酸も身体の機能を維持する上で不可欠な脂肪酸ですが、不飽和脂肪酸は体内では作ることが出来ないため食事から摂る必要があるのです。
不飽和脂肪酸は、植物油や、青サカナといわれる、アジ、イワシ、サンマ、サバなどに多く含まれています。
さらに、不飽和脂肪酸には、
- n-3系(オメガ3) : α-リノレン酸 → IPA、DHA、EPAに変わる
- n-6系(オメガ6) : リノール酸 → アラキドン酸やエイコサノイドに変わる
の2つが有り、
n-3系であるα-リノレン酸は体内でIPA、DHA、EPAに変わり、6-6系であるリノール酸はアラキドン酸やエイコサノイドに変わります。
これらの不飽和脂肪酸は、肥満や生活習慣病などのリスクを上げる中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす作用があるのです。
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オメガ3脂肪酸はうつ病の予防効果がある
うつ病と不飽和脂肪酸については多くの研究論文が出されています。
詳しく読む ⇒ うつ病と不飽和脂肪酸
青サカナに多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの脂肪酸を摂取すると、脳細胞膜の構造が変化し、うつ病に対し予防的に働くことが多くの研究で確かめられているのです。
うつ病患者における二重盲検無作為化プラセボ比較試験でオメガ3系脂肪酸(EPA 4.4g、DHA 2.2 g含有)を8週間摂取させたところ、うつ病症状が改善したという報告がなされています。
詳しく読む ⇒ Eur Neuropsychopharmacol. 2003 Aug;13(4):267-71
また、
うつ病患者は健常人に比べて血中アラキドン酸が高く、DHAが低く、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比がうつ病と相関がある可能性が示唆されています(Am J Clin Nutr. 2003 Jul;78(1):40-6.)。
さらには、
うつ病患者では脳の神経細胞の細胞体が存在する灰白質が縮小することが知られていますが、DHAは灰白質を増大させ、オメガ3脂肪酸のDHAにうつ病の改善効果が期待できるという論文も発表されています。
うつ病では脳内のセロトニン量が減少し、また、ドーパミンの不足はうつ病を引き起こすとされていますが、オメガ3不飽和脂肪酸は脳のドーパミンとセロトニンの分泌を促すと見られています。
うつ病と不飽和脂肪酸の関係については全ては解明されていませんが、オメガ3脂肪酸がうつ病と関わっていることは多くの研究により明らかになっているのです。
オメガ3系脂肪酸であるDHAやEPAは精神の安定にかかわる神経細胞に働いて、ストレスを緩和させる働きがあると見られています。
青サカナを食べれば、うつ病の予防や改善に効果が期待出来ることが多くの論文で立証されています。