ご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で精神疾患の新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
うつ病の治療法として運動療法が効果的であることは良く知られています。
運動療法といっても走ったりジムに行ったりする必要はありません。
少し歩くだけでもうつ病は予防できるのです。
天気の良い日に外を歩いてみませんか?
少し歩くだけでもうつ病は予防できる
うつ病には運動療法が効果的であることが知られています。
運動療法というと、器具を使ったり、走ったりすることを思い浮かべますが、大げさなことは必要ありません。
少し歩くだけでもうつ病は予防できるのです。
カナダのトロント大学の研究グループは、
運動がうつ病の発症を予防するか
について研究を行い、American journal of preventive medicine誌にその結果を報告しています。
Physical activity and the prevention of depression: a systematic review of prospective studies.
American journal of preventive medicine. 2013 Nov;45(5);649-57.
研究グループは、MEDLINE、Embase、PubMed、などの論文のデータベースから、「うつ病と身体活動」に関する6,363件の論文を抽出し、その内の30件の研究について、身体活動とうつ病のリスクとの関係を調べたのです。
その結果、
- 25件の研究で、身体活動とその後のうつ病リスクとの間に負の相関があった
- いずれの論文でも身体活動が将来のうつ病の発症を予防することを示した
- 1週間当たり150分未満のウォーキングなどの身体活動でもうつ病の予防に有効
という結論が出されました。
少し簡単に要約すると、
- 運動を行うだけうつ病発症が少なくなる
- 1週間に2時間半の散歩でも効果がある
ということなのです。
1週間に2時間半歩くといったら、毎日20分歩けば良いということです。
うつ病を予防するには少し歩くだけで良いのです。
うつ病には運動が効果的
うつ病の予防には運動が効果的なのです。
運動とうつ病の改善については、1999年にアメリカのブルメンタールという研究者が大がかりな研究を行なっています。
うつ病患者、156名を、
- 抗うつ薬を服用
- 運動療法だけで治療
- 服薬と運動療法
の3群にわけ、
抗うつ薬の服用群では、SSRIであるセルトラリンを処方しました。
運動群では、中程度の有酸素運動を、1回30分、1週間に3回行いました。
16週間後にいずれの群でもうつ状態が回復しましたが、運動群でも抗うつ薬服用と同じ改善効果が見られ、さらに著しく体力が向上しました。
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運動で回復すると再発が少ない
しかも、運動療法でうつ病が改善すると、その後の再発率が低いのです。
有酸素運動でうつ病が改善した人は、
- 90%の人で改善効果が10ヵ月間持続
- 再発率は8%
だったのですが、
抗うつ薬で改善した人は、
- 改善効果が10ヵ月間持続したのは55%
- 再発率は38%
にも上ったそうです。
運動によるうつ病の改善効果の機序についても最近の研究で次第に分かってきました。
- 運動することによって、記憶をつかさどる「海馬」の中の神経が再生しやすくなる
- 運動は幸福感につながる脳内物質「エンドルフィン」の分泌を促進し、気分を高める効果がある
- 運動により男性ホルモンのテストステロンが分泌されストレスに対する抵抗力が高まる
- 運動は睡眠の質を向上させる
などが関与しているのではないかというのです。
運動というと、ランニングや水泳、室内ではルームランナーやエアロバイクなどを思い浮かべますが、上の論文のように、ただ歩くだけの散歩でも効果があるのです。
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うつ病を予防するなら太陽を浴びて歩く
カナダの研究チームが明らかにしたように、毎日20分程度歩けばうつ病を予防できるのですが、
さらに効果的にうつ病を予防するためには、
日光を浴びながら歩く方が効果的
なのです。
気が滅入ってくると、なかなか外に出るのが億劫になり、コンビニに行くのも暗くなってから、、になってしまうのですが、せっかくであれば、太陽が指している日中に散歩に出た方が効果的なのです。
うつ病の一つに、季節性感情障害(SAD)というのがありますが、これは、季節の移り変わりによって不安を引き起こし精神的に落ち込んでしまう疾患です。
季節性感情障害の代表的な症状には、
- 夏季うつ
- 冬季うつ
の2つがあるのですが、
秋から冬にかけて日照時間が減少すると脳内のセロトニンの分泌が不足する
ことにより、冬季うつになるのではないかといわれています。
太陽の光は、私達の体内時計に大きな影響を与えており、光をスイッチにして脳内ホルモンであるセロトニンや睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌が調節されているのです。
冬季うつでは、日照量を調整するためライトセラピーといわれる光療法が行われますが、光療法は、強めの光の蛍光灯やLEDランプの下で朝一定時間、光を浴びる療法なのです。
運動療法は抗うつ薬と同等の回復が見込めます。
うつ病における運動療法は、
- 副作用が無い
- 再発率が抗うつ薬より低い
- 抗うつ薬の効果がないヒトにも効果がみられる
運動療法といっても、1日に20分歩けば良いのです。