今日はちょっと変わった論文を見つけました。
うつ病とED(勃起不全)に関する論文です。
今までの報告では、
- うつ病はEDのリスクを増加させる
- EDはうつ病を悪化させる可能性がある
ということが分かっているのですが、
今回紹介する論文では、
EDになるとうつ病になるヒトが多いというのです。
どうして、EDになるとうつ病になるのでしょうか?
EDと診断された1年目にうつ病の発症率が最も高いのだそうです。
EDになるとうつ病になるヒトが多い
うつ病になるとEDになるヒトが多いのは良く知られています。
しかし、その逆に、「EDになるとうつ病になるヒトが多い」のだそうです。
- うつ病 ⇒ ED
- ED ⇒ うつ病
EDになるとうつ病になるヒトが多いというのは、台湾の高雄医学大学のPing-Song Chou氏らの論文です。
Newly Diagnosed Erectile Dysfunction and Risk of Depression: A Population-Based 5-year Follow-Up Study in Taiwan.
Ping-Song Chou氏らは、
- うつ病はEDのリスクを増加させる
- EDはうつ病を悪化させる可能性がある
ということが分かっている者の、うつ病とEDとの関係については明確な因果関係が分かっていないとして、EDとうつ病との関連を明らかにすることを試みたというのです。
研究では、
台湾の国民健康保険調査記録データベースを用いてEDとうつ病の発症を5年間に亘り追跡調査したのです。
その結果は、
- ED患者はうつ病の発症リスクが高い
- ED患者はうつ病になるリスクが3倍高い
ということが明らかになったのです。
詳細には、
- EDと診断された男性2,527人
- ED患者と年齢でマッチする12,635人
について、5年間に亘りうつ病の発症を追跡調査したのです。
その結果、
- ED患者は非Eに比べてうつ病発症が2.24倍高い
- EDと診断された1年目にうつ病の発症率が最も高い
という、衝撃的な結果が明らかになったのです。
うつ病になるとEDになる
今回の論文では、
EDになるとうつ病になるリスクが高い
ということなのですが、
うつ病の診断基準の中には、
- 性欲減退やED
という診断項目があるのです。
- うつ状態 → 性欲減退 → うつ病 → ED
と進行するのか、
- ED → うつ状態 → うつ病
と進行するのか、いずれなのかは今回の論文では判然とせず、やや歯切れが悪い結論ではあります。
うつ病のEDは心因性ED?
EDの原因には2つあります。
- 器質的ED
- 心因的ED
です。
器質的EDとは、勃起に関与する血管、神経、陰茎海綿体などに機能的な障害があり勃起しないEDで、例えば、交通事故などによる陰部の外傷、前立腺癌や前立腺肥大による外科的手術による後遺症です。
心因的EDは、勃起に関与する血管や神経などに器質的障害がなく、心理的な原因により勃起しないEDのことです。
心理的な要因としては、過去の性交時における失敗による不安、失恋や夫婦間のトラブル、仕事の不安やストレス、など多岐多数の要因があり、ストレス、不安、イライラなどのうつ状態も性欲を減退させ心因的EDの原因です。
我が国においても、うつ病と ED の関連については1970年代後半ごろから研究者により指摘されており、 1990年代後半には、
ED 患者のうつの有病率はが、非 ED 患者に比べて2.6倍高い
との報告もされており、今回ご紹介した論文と同様の、EDになるとうつ病になるということは我が国でも確認されているのです。
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うつ病が治ればEDも治る
うつ病によるEDは心因性EDですから、うつ病が治ればEDは治りますから、まずはうつ病の治療に専心すべきです。
うつ病では、憂鬱な気分になり、何事にも意欲がわかなくなり、何をしても楽しくないというような状態が続きます。
従って、こんな状態では性欲も湧かないのは当然ですし、EDに陥るのは当たり前のことなのです。
陰茎の勃起は、性的な興奮が脳から陰茎に伝えられ、陰茎の血管が収縮して陰茎海綿体に血液が充満することによって勃起するのです。
うつ病では、性的な刺激を受けても充分に性的な刺激としてとらえることができないために、性的刺激を脳が十分に関知しないことから脳からの性的刺激が陰茎に伝わらず陰茎の海綿体動脈が充分に拡張しないたま勃起が起こらないのです。
しかし、うつ病でもバイアグラなどのPDE5 阻害薬は、陰茎海綿体を拡張させますので陰茎海綿体の血流が増加し勃起させることができるのです。
抗うつ薬でEDになる場合もある
うつ病の薬物治療では抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬、など様々な薬剤が処方されます。
抗うつ薬の中で現在、最も良く使用される SSRI薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、中枢神経系のセロトニンを増加させる薬剤ですが、性的衝動に関与するドーパミンを抑制する作用があるため、ED症状を引き起こす場合があります。
また、SSRIは早漏の治療に使用されたりすることもあるように、射精を抑制する作用があることから、SSRIを服用しているヒトでは性交時で射精に至らないことがあるといわれています。
うつ病ではEDを伴うことは希ではありませんが、性機能に問題があるのではなく心因的なEDです。
うつ病が治ればEDも回復しますから、心配する必要はありません。
EDのことは心配せずに、まずはうつ病の治療に専念してください。
また、必要であれば主治医に相談してバイアグラを処方してもらったらいかがでしょうか。
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