今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
鍼灸治療をご存じですか?
鍼灸は代表的な東洋医学の一つで、
- 肩こり
- 腰痛
などで鍼灸治療を受けている人も多いかと思います。
なんと、鍼灸治療はうつ病の抑うつの改善にも有効だというのです。
日本うつ病学会で昭和大学の中村医師の、
鍼灸はうつ病の症状改善に効果がある
という発表をご紹介しましょう。
鍼灸はうつ病の改善に効果がある
鍼灸とは、
- ハリ(鍼)
- キュウ(灸)
のことです。
鍼灸は東洋医学の一つで、鍼や灸を施すことで身体のバランスを整えて身体の機能回復をはかる治療法ですね。
鍼灸の起源は石器時代の中国ですが、
日本には奈良時代に中国の僧侶が仏典とともに伝承され、平安や室町時代に定着し、江戸時代に入って日本の伝統医学として独自の進化を遂げたと言われています。
鍼灸は、
- 腰痛
- 肩こり
- ひざの痛み
などの運動器官の痛みだけだけにしか効果がないと思っている方も多いのですが、
鍼灸による刺激は自律神経に効果的に作用して胃腸や心臓、血管などにの働きにも作用することが明らかになっています。
そんな鍼灸なのですが、
2021年1月25日から開催された「日本うつ病学会」でうつ病にも効果があることが発表されました。
神奈川県立精神医療センター/昭和大学発達障害医療研究所の中村元昭氏は、
鍼灸はうつ病の症状改善に効果がある
との発表をしました。
詳しく見る ⇒ 第17回日本うつ病学会
このシンポジウムは、
鍼灸はうつ病などの精神疾患に対しても一定の治療効果を有すると考えられ、
WHOも有用性を指摘しているが効果を客観的指標で検証することは難しい面があるとして、
鍼灸刺激がストレス応答機構へ与える影響を動物や患者で調べ、
鍼治療の、
- 抗うつ効果
- 抗不安症効果
を検証しようというものでした。
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鍼灸治療はうつ病患者の抑うつを改善
シンプジウムでは中村医師を始め4名の研究者が発表しましたが、
中村医師の発表したうつ病患者における鍼灸治療についてご紹介します。
中村医師らの研究グループは、
神奈川県立精神医療センターに入院している、
うつ病患者(抗うつ薬の効果がない重症患者も含む)を対象に鍼灸の有効性を検討した研究において、
- 精神症状と関連するとされるツボ
に対して鍼灸治療(針治療)を、
- 1週間に2回、5週間
をおこなったところ、
- 抑うつ
- 不安
- 怒り
が有意に改善したというのです。
研究は、2回(症例数69例、162例)おこなったそうですが、いずれにおいても抑うつ症状などの有意な改善が見られ、
患者は口々に「体が楽になった」と述べたそうです。
中村医師は、
鍼灸の効果は予想以上で「なんの効果も感じなかった」という患者がとても少かったとし、
さらなる研究が必要だが、鍼灸治療でストレスホルモンが減少した可能性があると述べています。
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まとめ
鍼灸治療は腰痛や肩こりなどだけでなくうつ病などの精神疾患でも有効なのです。
うつ病などに対する鍼灸効果についてはさらに研究が必要ですが、
近年の研究で、鍼灸治療によりモルヒネのような役割をもった内因性オピオイドが中枢神経ないに放出されることが明らかになっています。
このホルモンが、疼痛を脳に伝える神経経路をブロックすると同時に血行を促進や疲労の原因となる物質の排出作用などもあり、
鍼灸刺激は自律神経に効果的に作用してうつ病の原因となるストレスを解消する働きもあるのかもしれません。
シンポジウムには、特別発言者としてNHKの山本高穂氏も参加し「世界の鍼灸事情」の取材経験を披露しましたが、これは次回にご紹介しましょう。