双極性障害はうつ病と同様に気分障害というカテゴリーに分類される精神疾患です。
双極性障害の患者は世界に6,000万人もおり、
国内では500人に1人が双極性障害だともいわれています。
双極性障害はうつ病と間違えられやすく、
双極性障害だと正確に診断されるまで4年もかかったとの報告もあります。
先日は、双極性障害とうつ病は間違われやすいとのお話をしましたが、
今日は、双極性障害とうつ病に違いをくわしく見ていきたいと思います。
双極性障害とうつ病とは違う
双極性障害の患者は全世界で6,000万人もおり世界レベルでは100人に1人、国内では500人に1人だとする報告もあり、うつ病患者よりは少ないものの決して珍しい病気ではありません。
双極性障害は昔は、躁うつ病、双極性感情障害、双極症などと呼ばれていた病気で、
双極性障害のうつ状態の症状はうつ病の症状と非常に似ていることから、
双極性障害はうつ病と非常に間違われやすいのです。
杏林大学の研究グループは、
- 初診時には70%がうつ病と診断されている
- 双極性障害と正しく診断されるまで平均4年かかっている
との研究論文を発表しています。
くわしく見る ⇒ うつ病は双極性障害と間違われやすい
双極性障害では自殺率が高い
日本の自殺者は1998年以降10年以上にわたって3万人を超え、先進国の中では非常に高いのですが、遺書がないために事故死と見なされるため実際の数字は10万人を超えるとの見方もあります。
うつ病患者では自殺する人が多く、警察庁の調査では、自殺者の4割がうつ病を罹患していたとされています。
しかし、
双極性障害ではうつ病や精神疾患よりも自殺行動や自殺念慮のリスクが高く、
- 双極性障害患者の自殺既遂の生涯発症率は15%
- 双極性障害患者の25~50%は少なくとも1回の自殺企図の経験がある
という報告もある病気なのです。
うつ病の啓蒙や治療促進など、政策でもうつ病対策がとられていますが、双極性障害も侮れない病気なのです。
うつ病と双極性障害の症状の違い
うつ病は女性に多いことが多くの研究で明らかになっていますが、
双極性障害では、
- 男女差はない
- 好発年齢は25歳
- 初回発病は15~19歳
- 20~30代に発症することが多い
など、中学生から高齢まで幅広い年代で発症する可能性があります。
さらに、
一卵性双生児では双方性に発症する率が高く、遺伝的な要因の関与も高いといわれています。
双極性障害は昔は、躁うつ病、双極性感情障害、双極症などと呼ばれていたように、
- 気分が高揚した躁(そう)状態
- 気分の落ちこんだ鬱(うつ)状態
が交互に現れる病気で、
双極性障害
うつ病
と、
高低はありながらも、落ち込んだうつ状態が続くうつ病とは根本的に違います。
双極性障害の2つのタイプ
双極性障害には2つのタイプがあります。
双極Ⅰ型、双極Ⅱ型です。
2つのタイプとも、躁状態とうつ状態がくり返すことには違いがないのですが、
双極Ⅰ型では、躁状態が激しく、双極Ⅱ型では躁状態が比較的おだやかです。
うつ病と双極性障害の診断の違い
双極性障害は、躁うつ病とも呼ばれていたように、
うつ状態の病相に加え、うつ状態と躁状態の病相を繰り返すことが特徴です。
うつ状態では、
- 一日中憂うつで、沈んだ気持ちになる
- ほとんどのことに興味がもてなくなる
- 何もやっても楽しくない
- 食欲が低下する
- 性欲がない
など、国際的なうつ病の診断基準であるDSM-5に合致するような症状が見られ、
うつ状態の時にはほとんどうつ病との見分けが付かないと言われています。
しかし、いったん躁状態に移ると、
- 気分が良すぎたり、興奮したり、怒りっぽくなったりする
- 少ししか眠らなくても大丈夫
- 偉くなったように感じる
- いつもよりおしゃべりで饒舌になる
- さまざまな考えが浮かび注意が集中しない
- 活動性が高まりじっとしていられい
- 多額の借金をしたり爆買い、常識では考えられない投資をする
- 性的に無軌道になる
などの項目について、
1を含む、4つ以上があれば躁状態だとDSM-5では定義しています。
双極型障害でも、長期的に見ればうつ状態が長く、
初めての発症時には、うつ状態がほとんどでうつ病と間違ってしまうことも多いそうですが、再発をくり返す毎に、躁状態も明らかになり、躁状態とうつ状態の間隔が短くなると言われています。
したがって、落ち込みばかりではなく、いつもとは異なる気分の高ぶりにも注意することで、うつ病と双極性障害の見分けが付くのだそうです。
特に躁状態が激しい双極Ⅰ型では、
- 高額のローンを組んで買い物をする
- ギャンブルに全財産をつぎ込む
- 上司と大喧嘩して辞表を叩きつける
などのような、常道を逸した行動を取ることも希ではないことから気付きやすいのですが、
双極2型では、躁状態の程度が軽く、社会的能力も保たれているため、
患者自身も普段より気分が良く、周囲の人もうつ病が良くなったと勘違いし、異常だとは感じないことが多いのです。
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うつ病と双極性障害の治療の違い
- 双極性障害の治療の専門医は精神科医
- 心療内科や神経内科医にとって双極性障害は専門外
としています。
そして、
双極性障害のうつ状態で受診する場合は、
精神科医(メンタルクリニック)を受診すべきで、
- 心療内科・精神科
- 神経内科・精神科
- 神経科・精神科
などの診療科には精神科医が診療していると薦めています。
双極性障害の躁状態で、
入院が必要になる可能性があるとおもわれる場合は、
最初から、入院施設のある精神科病院を受診しておく方が安心であるとしています。
双極性障害の治療では、基本的に、
- 予防 : 気分安定薬、一部の抗精神病薬
- 躁状態 : 気分安定薬、抗精神病薬
- うつ状態 : 気分安定薬、一部の抗精神病薬、抗うつ薬
- 不眠 : 睡眠薬、一部の抗精神病薬
としていますが、
日本うつ病学会では、
双極性障害は、
- 急に重い病相へと変化することがある
- うつ病相は抗うつ薬に治療抵抗性である
- 自殺率が高い
- 障害の程度が重い
- 罹病期間が長い
などの特徴があるとしています。
うつ病が治らなかったら双極性障害を疑う
慢性的な長期のうつ病と思われていた人が、
実は、
双極性障害であることが判明し治療法を変えることで改善する人も少なくないのだそうです。
うつ病から双極性障害へ診断が変わる理由としては、
うつ病としての治療経過中に躁病相が出現し、双極性障害に診断が変更される患者が5~15%もいるとの報告があります。
特に、
- うつ病相を繰り返している場合
- 10代から20代の若年の場合
には、うつ病ではなく双極性障害の可能性が高いといわれています。
双極性障害では、抗うつ薬が効果がないばかりでなく、逆に、躁状態を引き起こし、病態を不安定にすると言われています。
そのため、双極性障害ではうえに書きましたように、気分を高揚させる抗うつ薬ではなく、精神の安定化を図るために気分安定薬が処方されるのです。
- うつ病の治療が長期化しても改善しない
- 時々気分が良くなりうつ病が治ったような気持ちになる
というようなときには、うつ病ではなく双極性障害の可能性もあるのです。
うつ病の治療中で、
病気が治ったような躁状態の後に、再びうつ状態が現れるような時には、
くわしく主治医に相談することが大切です。
慢性化したうつ病では、気分の落ち込みだけではなく、いつもとは異なる気分の高ぶりにも注意することが改善のきっかけになるかもしれないのです。
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