抗うつ薬の服用は認知症のリスクを高める?
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
イギリスの研究グループは、
ある種の抗うつ薬を長期的に服用すると認知症になる可能性がある
との研究論文を発表しています。
Some antidepressants may be linked to dementia study
Long-term use of some anticholinergic medications are associated with an increased risk of dementia, according to a new study led by the University of East Anglia (UK).
詳しく読む ⇒ 原著論文
この研究では、
65歳以上の、
- 認知症患者: 40,770人
- 非認知症者: 283,933人
を対象に、
過去4~20年の間に、
- うつ病
- 泌尿器疾患
のために、
- 抗コリン作用薬を服用していた者
- 服用していなかった者
について、
認知症の発症割合
を調べたのです。
その結果、
抗コリン作用薬を服用していた人では認知症のリスクが30%高い
ことが分かったとしているのです。
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抗コリン作用のある抗うつ薬
抗うつ薬の中で抗コリン作用がある薬としては、
- アミトリプチリン : トリプタノール、ラントロンなど
- 塩酸ドスレピン : ドスレピン、プロチアデン
- パロキセチン : パキシル
などがあります。
第1世代といわれる三環系抗うつ薬には、
- 抗コリン作用
- 抗アドレナリン作用
- 抗ヒスタミン作用
など、副作用の原因となる作用があるため、
抗コリン作用などを減弱させた四環系抗うつ薬が開発されています。
抗コリン作用のある薬は、
- 神経因性膀胱
- 活動膀胱
などの、頻尿や尿意切迫感などの治療でも処方されます。
抗コリン薬は膀胱の緊張を緩めて尿意を緩和させるからなのです。
抗コリン薬とは、正確には抗アセチルコリン薬のことで、
アセチルコリンに拮抗する作用の薬ということです。
アセチルコリンは、神経から神経に情報を伝える神経伝達物質の1つで、主に副交感神経の神経伝達物質なのです。
自律神経系には、交感神経と副交感神経とがあり、
- 交感神経 : 身体を緊張させる神経
- 副交感神経 : 身体をリラックスさせる神経
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研究グループは、
認知症の原因は抗うつ薬だと断定はできないとして、
自己判断で抗うつ薬の服用を中止すべきではないとしています。
専門医への相談なしに抗うつ薬の服用を止めるようなことはしないで下さい。