うつ病は国内でも最も罹患率の高い精神疾患で、
日本人の、
- 女性は12人に1人
- 男性は29人に1人
が生涯に1度はうつ病になると言われています。
最近は認知行動療法がうつ病に有効であるとの科学的成績もたくさん出ており、
うつ病患者の70%で認知行動療法で改善したとの報告もあるのですが、
人的や金銭的コストから依然として抗うつ薬による治療が一般的で、
国内でも10種類を超える抗うつ薬が販売されています。
日本うつ病学会ではうつ病の診療ガイドラインを出してはいますが、
- どの薬が最も患者に有効なのか
などの判断については、科学的なエビデンス(根拠)が少ないことから医師の経験によるところが大きいと言われています。
京都大学は抗うつ薬の効果と副作用を評価
京都大学の研究グループは、
現在では多くの抗うつ薬が販売されているものの、
- 抗うつ薬にどの程度の効果が期待できるのか?
- 抗うつ薬にはどの程度の副作用があるのか?
などについて網羅的に調べた報告はないとして、
抗うつ剤の効果や副作用を網羅的に比較 した研究成績を発表しました。
詳しく読む ⇒ 京都大学プレスリリース
この研究では、
全世界で行われた抗うつ剤の効果や副作用を報告した研究論文を収集し、
- 116,477人の患者
- 21種抗うつ薬
- 522件の試験
を総合的に解析し、
- 抗うつ剤の効果
- 副作用による投薬中止の割合
などを比較したのです。
その結果、
- 調査した21種の薬剤は全て効果があった
- アミトリプチリンは最も効果が期待できる
- レボキセチンの効果はやや弱い
ということがわかったとして、
エスシタロプラムは
- 効果の良さ
- 副作用の頻度
で最も良い結果だったと結論しています。
この成績は、2018年2月22日に世界的権威のある医学誌「The Lancet」に掲載されました。
Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis
詳しく読む ⇒ 原著論文
研究者代表者の古川教授らは、
今回の結果は、
- エビデンスに基づいた治療戦略を立てる上で医者と患者の双方にとって有益な成績
- うつ病の治療ガイドラインや医療政策の策定でこのデーターを参照すべき
と述べていますが、
各患者で細かな症状の違いなどもあることから成績のよかった抗うつ薬が全ての患者で最も効果があるわけではない
とコメントしています。
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うつ病に最も効果があるエスシタロプラムとは
今回の京都大学の研究グループが、
- 最も効果が良かった
- 最も副作用の頻度が少なかった
とした、
エスシタロプラムとはどんな薬なのでしょう。
エスシタロプラムというのは化学物質名で、正確にはエスシタロプラムシュウ酸塩といわれます。
エスシタロプラムは、デンマークのルンドベック社が開発したSSRIで、
SSRIというのは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬と呼ばれる作用機作の抗うつ薬です。
日本では4種類のSNRIが既に発売されており、
- ルボキサミン(商品名ルボックス/デプロメール):1999年発売、アッヴィ
- パロキセチン(商品名パキシル):2000年発売、グラクソスミスクライン
- セルトラリン(商品名ジェイゾロフト):2006年発売、ファイザー製薬
- エスシタロプラム(商品名レクサプロ):2011年発売、持田製薬
ということで、
エスシタロプラムはレクサプロという商品名で持田製薬が2011年4月に製造承認され、
現在は田辺三菱製薬販売、吉富薬品プロモーション提携とし販売されています。
エスシタロプラムは世界100ヵ国あまりで販売されており、少し前ですが2010年8月では投与患者数は2億3,000万人以上だと言われています。
日本でのレクサプロの適応は、
- うつ病・うつ状態(2011年)
- 社交不安障害(2015年)
の2症状ですが、
海外では、
- 大うつ病性障害
- パニック障害
- 社会不安障害
- 全般性不安障害
- 強迫性障害
- 月経前気分不快症
などの適用でも承認されています。
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レクサプロの特徴と副作用
レクサプロの特徴としては、
- 効果と副作用のバランスが良い
- 1日1回で効果が期待できる
- 有効用量まで増量しやすい
- 離脱症状が少ない
などが挙げられています。
副作用は、レクサプロはセロトニンを刺激してしまうことから、
- 胃腸障害(嘔吐や下痢)
- 不眠などの睡眠障害
- 性機能障害
があると言われていますが、
特に胃腸障害の副作用の頻度が高いようです。
詳しく読む ⇒ レクサプロの添付文書
日本うつ病学会では「うつ病の診療ガイドライン」を出していますが、
有効性に関する多くの報告を総合的に解釈すると、
有効性と忍容性においてはSSRI、SNRI、ミルタザピンを含む新しい抗うつ薬に優劣はつけられない
と記しています。
詳しく読む ⇒ 日本うつ病学会のうつ病の診療ガイドライン
さらに、京都大学の研究グループも、
各患者では症状に細かな差異があることから今回成績の良かった抗うつ薬が全ての患者で最も効果があるわけではない
と述べています。
最近では、認知行動療法がうつ病に有効であるとの科学的成績もたくさん出ており、
うつ病患者の70%で認知行動療法で改善したとの報告もあります。
また、ハタヨガでうつ病患者の50%が改善したとの報告などもあり、
抗うつ薬だけに頼らず、積極的に自分から治す行動を起こす必要もあるのです。