産後うつ病は産後クライシスの原因
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
産後クライシスという言葉をよく耳にします。
産後クライシスと産後うつとはどのように違うのでしょうか、、
産後うつ病は産後クライシの原因でもあるのです。
産後クライシスとは何か?
近年、よく耳にする、「産後クライシス」ですが、医学用語はありません。
産後クライシスは、2012年にNHKの「あさイチ」という番組の中で紹介されましたが、産後クライシスはNHKが作った造語です。
クライシス(crysis)とは、危機、破壊などの意味の英語で、NHKでは、産後クライシスを「産後における夫婦関係の破壊」の意味で使ったのです。
産後クライシスの定義としては、
出産後2年以内に夫婦の愛情が急速に冷え込む状況
だとしています。
産後クライシスによる離婚が増えている
産後クライシスの実態は、あまり知られてませんでしたが、厚生労働省は、5年に1度「母子家庭になった時期」の調査を行っており、
母子家庭になった時期で最も多いのは子供が0歳~2歳の時期
だということですから、出産後2年以内の離婚であり、まさしく産後クライシスによる離婚だというのです。
具体的には、
母子家庭になった時の子供の年齢は、
- 0~2歳 : 35.2%
- 3~5歳 : 25.1%
で、離婚する夫婦の半数以上は子供が5歳以下のうちに離婚に至っているのです。
産後クライシスの症状
産後クライシスは、夫婦間の一時的な感情のズレでもあるのですが、最悪の場合には離婚にまで発展してしまう可能性もあるし、また、離婚は踏みとどまったものの、その後長期に亘って夫婦の間が冷え切ってしまうことも多いのです。
番組の中で、ベネッセコーポレーションが行った興味深い調査を紹介していました。
ベネッセコーポレーションは、2006~09年に300組の夫婦について、妊娠後期から新生児が2歳になるまでの約3年少の期間において、「配偶者への愛を感じるか」という意識調査をしたのです。
その結果、妊娠後期には男女ともに7割が「愛している」と感じていたのが、子供が2歳になると男性では50%、女性では34%しか「愛している」と感じていないというのです。
なんと、
子供が2歳になる頃には、夫は1/2、妻は1/3しか相手に愛情を感じないのです。
男性ももちろんそうですが、女性の相手に対する愛情が薄れている傾向が産後クライシスの要因のようです。
出産後に妻の夫への愛情が下がり続ける
これが、産後クライシスの症状のようです。
女性の愛情低下が日本の特徴
番組の中で、お茶の水女子大の菅原教授は、
- 産後の愛情低下はアメリカでも報告されているが男女同率
- 日本では女性の愛情の下がり方が激しいのが特徴
だと述べており、
日本では夫の家事や育児への参加が世界的に最低水準
であるからだと指摘していました。
貴女は産後クライシス?
産後クライシスは女性だけの問題ではなく、夫である男性にもその一端がありますが、「特に妻の夫に対する急激な愛情の低下」が大きな原因のようです。
妻における、産後クライシスの前兆としては、
- 夫にイライラする
- 夫にもっと育児を手伝って欲しいと思う
- 出産後には夫婦の時間や会話が減った
- 出産後はセックスレスになった
- 妊娠時期に夫が浮気をした
- 夫には父親としての自覚がないと思う
- 自分の夫を他人の夫と比較してしまう
ということだと言われます。
- 出産前良く2人で出かけたが今はもう嫌や
- 夫と接触するのを避けるため夫の帰宅前に寝る
- 夫と一緒にいるのもイヤ
- 夫が性欲の塊に見える
と、分娩を境に女性の愛情が豹変してしまうのです。
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産後クライシスの原因は産後うつ病
NHKの番組の中で、お茶の水女子大の菅原教授は、257人の家族を23年にわたって追跡調査したのだそうですが、出産後に愛情が冷めてしまうと20年以上経過しても夫婦関係が修復できない夫婦が多く、子供が思春期に入った頃にさらに愛情が低下する傾向にあると指摘しています。
出産後2年以内に離婚に至ったり、20年以上経過しても夫婦関係が冷え切ったまま、、こんな産後クライシスはどうしても避けたいものですが、女性側としてはどんな原因があるのでしょうか?
産後クライシスでの症状である、
- 子育てが孤独で耐えられない、不安ばかりで焦ってしまう
- 子供の夜泣きがひどい、自分は母親失格かもしれない
- 夫と助け合いたいのにイライラが止まらない、夫が嫌になった
などは、産後うつ病の症状でもあるのです。
産後うつは急激なホルモンの変化が原因
妊娠すると胎児を育てるために、黄体ホルモン(プロゲステロン)などのホルモンが増加し、妊娠前とはホルモンのバランスが大きく変わります。
そして分娩後には、妊娠中に急増したホルモンが一気に減少するのです。
このホルモンバランスの急激な変化により自律神経のバランスが乱れることがあります。
自律神経の乱れで、急に体温が上がったり、急にドキドキしたり、急に寂しさを感じたりしてしまうことが多いのですが、脳内物質であるセロトニンの分泌が低下し、分娩後はこのような情緒不安定になりやすいのです。
さらに、女性ホルモンのエストロゲン分娩後に急減することも脳神経細胞の働き方が変化し、不安や孤独を感じやすくなるといわれています。
これは、マタニティーブルーとも言われ、分娩したほとんどの女性でみられるのですが、マタニティーブルーにおける情緒不安定を理性でコントロールするのは難しいといわれます。
このマタニティーブルーは通常は分娩後直ぐに見られ、2週間程度で回復するものですが、10%程度の産婦ではマタニティーブルーが長引き、産後うつ病に移行してしまうといわれます。
したがってく、産後クライシスを防ぐには、マタニティーブルーから産後うつ病に陥ることを防ぐ必要があるのです。
くわしく見る ⇒ マタニティーブルーから産後うつになるのを防ぐには
かつては家庭には母親が居て、祖父母が居るような大家族が普通でしたが、現代社会では核家族化が進み、夫婦2人の家族がほとんどになりました。
大家族では誰かが赤ちゃんを見てくれたり、誰かが家事をやってくれたり、また、母親も祖父母も育児経験者ですから適切なアドバイスがあり、一人で家事もこなし、育児に思い悩むようなことはありませんでした。
しかし、夫婦2人の生活では、育児も家事も全部を貴女が、育児で悩んでも誰もアドバイスしてくれない、、、こんな思い詰めた状況がついつい夫に当たったりしてしまい、夫婦間が醒めてしまう原因にもなるのです。
昔の友人に電話したり、近所のお友達と話をしたり、気持ちを外に向けることが一番重要なのです。
産後クライシスはどうしても避けたいものです。
しかし、ピンチはチャンスで、産後クライシスになりやすい時期は夫婦の絆を強くできる時期でもあるのです。
産後クライシスにならないためには産後うつ病にならないように充分気を付けてください。
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