うつ病患者がアルコール依存症を伴う頻度が高いことは多くの疫学調査で明らかになっています。
しかし、アルコール依存症でうつ病を併発する人も多いのも事実なのです。
適度な飲酒では気分がハイになり悩み事も忘れることができるのですが、
アルコールが抜けると再び落ちこんだ気分になり飲酒に走ってしまうことも多いのです。
飲酒した翌日に不安になるのはうつ病ではなくハングザイエティーといわれる症状ですが、
- 落ち込んだ気分を解消したい
- 悩み事を忘れたい
という目的で飲酒することはうつ病のリスクを高めるためやめておいた方が良さそうです。
飲酒はうつ病を促進する
飲酒とうつ病の関係については多くの報告があります。
しかし、
アルコール依存症の患者にはうつ病が多い
という多くの報告がある一方で、
うつ病の患者にはアルコール依存症が多い
のも事実なのです。
アルコール依存症とうつ病を合併する患者は10%程度ではないかといわれているのですが、
アルコール依存症が先か?
うつ病が先か?
飲酒はうつ病の危険因子なのか?
うつ病はアルコール依存症のリスク因子なのか?
飲酒とうつ病の関係についてはどちらが先なのか明らかでない部分があるのです。
詳しく見る ⇒ アルコール依存症はうつ病になるのか?
飲酒はうつ病のリスクを増加させる
カナダのマギル大学の研究グループは、
うつ病の発症率に対するリスクファクターの研究結果を報告しています。
Risk factor modifications and depression incidence: a 4-year longitudinal Canadian cohort of the Montreal Catchment Area Study.
詳しく読む ⇒ コチラ
研究グループは、
モントリオールの疫学調査の参加者2,433例について、
うつ病の発症に対するリスクファクターに対する因子を検討したのです。
その結果、
- 2年間の追跡期間中のうつ病の発症率は4.8%
- 4年間の追跡期間中のうつ病の発症率は6.6%
であったのですが、
うつ病の発症リスクの増加と関連する因子は、
- 年齢の若さ
- 女性
- 未亡人や別居または離婚
- 貧困
- 飲酒
- 教育履修年
など、多くのファクターがうつ病の発症と関連していることがわかったのです。
飲酒については、
2年間の追跡期間中は飲酒によるうつ病の発症は5.1%
だったのですが、
4年間の追跡期間中は飲酒によるうつ病の発症率が倍増
したのです。
研究グループは、
飲酒率を10%低下させるとうつ病の発症を半減できる可能性がある
と述べているのです。
飲酒はうつ病を促進する
うつ病とアルコールとの関係について、
オーストラリアのRMIT大学は、
アルコール摂取はうつ病を促進する
と報告しています。
Alcohol and depression: Evidence from the 2014 health survey for England.
詳しく読む ⇒ コチラ
研究グループは、
イギリスの健康調査に参加した、
5,828例の参加者について、
自己評価によるうつ病の評価とアルコールの摂取情報を解析したのです。
その結果、
アルコール摂取によりうつ病が促進されることが明らかになった
と報告しています。
さらに、
アルコール摂取とうつ病の関係については、
- アルコール摂取量
- 摂取するアルコールの強さ
- アルコール依存症
などのパラメーターとも関連していたと述べています。
飲酒は気分をハイにしてくれます。
適度な飲酒は悩みごとや心配事を忘れさせてくれます。
飲酒が過ぎたときには(私はしばしばあるのですが)、
翌日に落ち込んだ気分になってしまいます。
これは、ハングザイエティー(hangxiety)と言う現象です。
ハングザイエティー(hangxiety)は、
二日酔い (hangover) + 不安 (anxiety)
の2つの言葉で作られた造語です。
ハングザイエティーはうつ病や不安神経症ではありませんから心配ありません。
しかし、
- 気分を晴らす
- 嫌なことを忘れる
という目的で飲酒するのは止めたほうが良いようです。
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