ボトックスはうつ病や不安症の改善に効果がある
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
ボトックスを知っていますか?
ボトックスは顔のシワ取りなどの美容目的で使われる医薬品で、
アメリカでは20年以上の医用履歴が有り、
国内では2009年に承認されていたい10年間で170万人がボトックス治療を受けたと推定されています。
なんと、そのシワ取りのボトックスがうつ病や不安症状の改善に効果があるというのです。
私も知らなかったのでさっそく調べてみました。
ボトックス注射がうつ病や不安症に効果がある
ボトックスはシワ取りなどの美容医療で使われる医療用医薬品なのですが、
アメリカのカリフォルニア大学の研究チームによれば、
美容や医療目的のボトックス注射を行った4万人の経過データを分析したところ、
額や首などの部位にボトックス注射された人では、
不安症のリスクが最大で72%減少し、
うつ病のリスクも大幅に減少していることも確認できた。
というのです。
この研究結果は12月21日に世界的な科学雑誌Scientific Reportsに掲載されました。
Postmarketing safety surveillance data reveals protective effects of botulinum toxin injections against incident anxiety
詳しく見る ⇒ Scientific Report
ボトックスは、顔のシワ取りなど意外にも、筋肉の緊張をともなう片頭痛や手足の痙攣、筋肉のアンバランスによる首の痛みなどを目的として体の様々な部位に注さされるのですが、
研究グループは、
美容、片頭痛、手足などの痙攣、斜頸・首の痛み、まぶたの痙攣、多汗症、唾液分泌過多、膀胱疾患などの8種類の疾患の治療で、
- ボトックスで治療
- その他の方法で治療
された患者についてうつ病や不安症の発生頻度を比較したのが今回の研究なのです。
今回の研究では、眉間、頭部、首などの特定部位へのボトックス注射がうつ病や不安症のリスクを下げている可能性が示されたのです。
研究者は、
今後はボトックス注射が脳神経に影響を与えるメカニズムを解明していくとのべていますが、
ボトックスがうつ病や不安症のリスクを改善したことについて、
ボトックス注射の主成分であるボツリヌス毒素には、
脳内のネガティブな感情にかかわる回路を麻痺させる機能があるからではないかと推測しています。
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うつ病のリスクを下げるボトックスとは?
ボトックスとはボツリヌス菌が産生する毒素から作られた医薬品です。
ボツリヌス菌は土壌や海や湖の泥の中などに存在する嫌気性菌で、
缶詰、ビン詰、ハムやソーセージなどでの食中毒になる原因菌で、
A型ボツリヌストキシンという、めまい、言語障害、嚥下困難、呼吸困難などを引き起こし死亡率が30%以上ともいわれる毒素を産生するのです。
アメリカの医薬品メーカーであるアラガン社はこの毒素からボトックスビスタという医薬品を創生しまし、
今では世界80ヵ国以上で使用され、日本でも美容関係においての使用が認可されています。
ボトックスは、注射した部位の神経の伝達をブロックして筋肉の働きを止め、筋肉を動かせないようにする効果があります。
そのため、美容外科領域において、
- 表情じわ(眉間、額、目尻などのしわ)
- エラ張り(咬筋肥大)
- ワキ汗(多汗症)
などの適応で使用されています。
ボトックスの効果は、
シワ改善であれば2~3日後には効果がみられ3~4ヵ月持続すると言われています。
ボトックスがうつ病に効果があるのは間違いない
ボトックスの注射は美容領域以外でも、
偏頭痛、唾液分泌過多症、声帯や上気道の障害などでも使われていますが、
ボトックスがうつ病の改善に効果があることは今回の論文以外にも報告されています。
世界で初めてボトックスがうつ病に効果があると報告されたのは、
2006年のアメリカの研究者によります。
研究グループは、
うつ病患者10名に、
ボトックスを眉間に注入したところ、
10人中9人でうつ症状が軽減したと報告しています。
さらに、2011年にはうつ病患者60名を対象にした臨床試験が開始されています。
Efficacy Study of Botox for Depression
Official Title: A Controlled Study of the Efficacy of Botulinum Toxin A (Botox) for the Treatment of Major Depressive Disorder (MDD)
詳しく見る ⇒ Clinical Trial.gov
ボトックスのうつ病や不安症に対する改善効果は、
眉間や額上部、頸部などに注射したときに見られるようです。
作り笑いをするだけで幸せを感じることは、
50年も前に複数の研究で明らかにされています。
ボトックスの注射により、顔をしかめるて憂鬱な気持ちになることをなくすることによりうつ病の改善つながる可能性があると研究者達は主張しているのです。
笑顔、たとえ無理してつくった笑顔でもうつ病の改善には効果があるようです。
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まとめ
ボトックスがうつ病や不安症のリスクを下げることは多くの研究で明らかになっていますから間違いないと思われます。
しかし、国内での承認は美容領域での適応ですから、
うつ病や不安症の治療で使われるようになるまでには多くの時間を要すると思われます。
笑顔、たとえ無理してつくった笑顔でもうつ病の改善には効果があるようですから作り笑いでも顔の筋肉を動かしてみませんか?。