高齢者うつ病を誤診すると認知症になる|週刊文春
今日もご覧になっていただきありありがとうございます。
臨床の経験はないのですが20年以上にわたって製薬会社で新薬の研究開発を行っていた医学博士の けんぞう です。
今日も科学的根拠に基づいた精神疾患関連の情報をお伝えいたします。
はじめに
うつ病は、働き盛りの若い人や女性で多いというイメージがあるのですが、
実は、高齢者うつ病が増えており、
65歳以上の高齢者では10人に一人がうつ病だといわれています。
高齢者うつ病はうつ病性仮性認知症といわれるほど認知症に似ており誤診される場合も多いのです。
今週の週刊文春では、
うつ病と認知症では原因も治療法も全く異なることから、
誤診すると3年で50%以上がホンモノの認知症になってしまうと警告しています。
高齢者のうつ病では自殺率が非常に高いのも特徴です。
お年寄りの家族が認知症かな、と感じたら高齢者うつ病を疑ってみることも大切です。
高齢者のうつ病患者が増えている
うつ病と聞くと働き盛りの若い人に多いと思われるのですが、
実は高齢者にもうつ病が多く、年々増加しているというのです。
厚生労働省の平「成26年患者調査」によると、
うつ病などの気分障害で医療機関を受診している患者数は111万6,000人と過去最高に達し、平成8年の43.4万人から2.6倍も増加し、糖尿病(1.5倍)、高血圧(1.4倍)に比べて群を抜いて増加しているのです。
年齢別では、トップは40歳代が19.6%を占めているが、
- 60歳代 : 17.3%
- 50歳代 : 15.4%
と高齢でも多く、
65歳以上の高齢者のうつ病患者は34万人と全体の30%以上を占めており、
高齢者の10人に一人がうつ病を患っているのです。
詳しく見る ⇒ 厚生労働省の平成26年度患者調査
しかもこの数字は、通院している患者数ですから、
実際の高齢者のうつ病患者はもっともっと多いとみられているのです。
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高齢者のうつ病は認知症と間違われやすい
このサイトでもつい先日、書いたのですが、
高齢者のうつ病で問題なのは、
高齢者のうつ病はうつ病性仮性認知症といわれるほど認知症に似ており、
うつ病なのに認知症と誤診される場合が多いのです。
今回の、週刊文春の特集では、
誤診すると3年で5割以上がホンモノの認知症にも
「高齢者うつ」と「認知症」
というタイトルなのですが、
認知症とうつ病は症状は似ているものの、全く異なる病気で、効く薬も違う。
もし間違えると、症状が悪化するばかりでなく、ホンモノの認知症になってしまう。
というのです。
高齢者のうつ病と認知症との症状の違いは「高齢者のうつ病は認知症との違いは」に書いたのですが、
通常のうつ病で見られる、
- 憂鬱になる
- 気分が落ち込む
ような症状はあまり見られず、
- 焦燥感
- 不安感
が強く、
- 家の中でソワソワしたり
- 妄想を抱く
ことが多いそうなのです。
これらの症状の違いや、
うつ病の人の6割は内科をを受診し精神科を受診する人は1割にも満たない
ということも、うつ病が認知症と間違われてしまう背景にあるそうです。
週刊文春の記事の中で、
くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤医師は、
うつ病性仮面認知症はかなりの確率でホンモノの認知症に移行し、
・ 2年で12%
・ 3年で50%
・ 8年で90%
が認知症に移行する。
と述べています。
老人だけでなく、うつ病全体で見ても、うつ病患者が認知症を発症する割合が高く、
うつ病患者が認知症を発症するリスクはうつ病でない人より2倍も高いのです。
記事の中で、国立精神・神経医療研究センターの功刀医師は、
うつ病患者が認知症を発症しやすい原因は、ストレスホルモンといわれるグルココルチコイドの影響で記憶を司る脳の部分が萎縮するため
だと述べています。
すなわち、高齢性うつ病は認知症の初期症状の可能性があるのです。
それを避けるには、
早い段階で高齢性うつ病と認知症を見分け、適切な治療を受けることが大切なのです。
高齢性うつ病と認知症の見分け方はこのサイトでも書きましたが、
くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤医師は、
うつ病では思考のスピードが低下するので、何かを聞かれた場合でも返事が遅い。
認知症では反応速度は変わらないので、的外れな返事のときもあるが言葉のキャッチボールはスムーズ。
と述べていますから、参考になりそうです。
高齢の家族が、元気も無いし、認知症かな、、、と感じたら高齢性うつ病をも疑ってください。
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